Monday, January 19, 2009

恋愛勘違い事情 02

 寝坊をしてしまった。
 走るとき足に絡み付くスカートがとてもうざったいし、革靴は本当に走りにくい。これがミニスカートで、スニーカーを履いていて、ついでに他校の子が持っているような斜めがけのスクールバッグだったらどれだけ走り易いだろう。
 必死の思いで階段を駆け上がり、今まさに閉まろうとしている扉に身を滑り込ませた。
 ぎりぎりセーフ。
 なんとかいつも取っている朝の電車に間に合って、ほっと息をついた。
 この電車を逃していたら学校に遅刻していたかもしれない。校則に厳しいうちの学校は、遅刻にも厳しいのだ。キリスト教系なので、礼拝のため普通の学校よりも10分ほど早く学校が始まるし、起きるのが苦手な自分には朝は本当に辛い。

 学校の最寄り駅についた頃に、やっと動悸と息切れが収まった。運動不足なんだろうか。プラットフォームに降りながら、熱い頬に手を当てる。
 朝の電車では、あの人には会わないのだが、そのことに今更ながらに感謝する。
 あんな格好悪い姿を見られてしまっていたら、きっと恥ずかしくて帰りの電車では顔を上げられないかもしれない。
 手の甲がひんやりとしていたので汗ばんでいた額にあて、発進する電車を背に階段を上った。
 もうすでに朝の一運動を済ませたような気分なのに、これから駅から高校へ続く通学坂を上らなければならないと思うとうんざりだった。
 しかも最悪なことに今日は月に一度来る女の子の日でもある。
 苛々する気分に拍車がかかり、眉根を寄せながら歩いた。

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 今日は朝礼があるので、生徒会のミーティングのため、少し早めに家を出た。
 週一くらいの頻度でこの時間に通うのだけど、実は嬉しいことがある。この時間の電車には、あの子が乗っているのだ。
 お互い高校の最寄り駅の出口に一番近い車両を選ぶので、帰り道とは違って同じ車に乗ることはないのだけれど、電車を待っている姿は見える。
 うきうきとした気分で早めに駅に行ったのだけど、その日は生憎と彼女の姿がプラットフォームにはなかった。
 電車が到着して仕方なく乗り込む。もしかしたら今日は違う時間に登校したのかもしれない。それか今日は休みなのかも。朝礼でも風邪が流行っている由が保険委員からの知らせにあった筈だし、彼女もかかってしまったのかもしれない。
 そんなことを思いながら、その日の朝はもう会うことを諦めていたのだけど。

 彼女の高校の最寄り駅で電車が停車したとき、水色のワンピースの一群に紛れるように探していた姿を見つけた。
 どうやら同じ電車で来ていたらしい。もしかすると駅に来るのが遅れていただけだったのかもしれない。なんとなく嬉しい気分で彼女を眺めていると、ふと彼女の頬がいつもより赤いことに気がついた。
 しんどそうに額に手をあてて階段を上る姿に、自分のさきほどまでの予想が遠からずだったことに思い至る。
 きっと体調が悪くて駅に来るのが遅れたのに違いない。
 電車が出発する間際に見た彼女の顔はなんだか辛そうだった。可哀想に。早めに早退していることを祈っていよう。今日の放課後は会えないかもしれないな。

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