Sunday, January 11, 2009

愛とはかくも難しきことかな21

 はっと目を見開くと、部屋の中はまだ暗かった。
 ベッドサイドの近くの時計で確認すると、夜中の2時半。まだ3時間も寝ていないようだった。
 耳を澄ますと、人の話し声がした。二人はまだ起きているようだ。
 そろりと客室から抜け出して、廊下を辿る。リビングに近づくに連れて、優成さんの声がはっきりと聞こえた。
「だから、信用できないって言ってるだろう!可哀想じゃないか、まだ子供なのに。……だから、それが間違ってるって」
 リビングに続く扉を開けると、小さく軋む音がした。それに気づいて優成さんが振り返る。それから電話口に向かって「とにかく、明日電話するから」と言って手に持っていた携帯電話を切った。
「すまない。起こしたか?」
「いえ、嫌な夢を見て」
 そう言うと、優成さんに手招きされて彼の座ってるソファに近づいた。
 矢田さんもその場に居て、向かいのソファでグラスを傾けていた。彼は結構飲んでいるのか、頬が薄らと赤らんでいた。
「萌ちゃんも飲む?」
「でも、未成年ですから」
「ふふふ、気にしなくても良いのに」
「矢田、お前もそろそろ止めにしないと、明日大学あるんだろ」
 絡み酒なのかな、と疑問に思ったとき、優成さんが口を挟んだ。
「あーそうだ、ミーティングあるんだった」
 その言葉に少し酔いが覚めたのか頭を掻きながらソファに沈めていた上体を起こす。優成さんがテーブルの上のグラスを片付け始めたので、萌もならって散らかっていた皿やお菓子類をまとめた。
「御堂はどこで寝る?」
「ソファでいい」
 その言葉に客室は一つしかないのだと気がついたので、慌てて口を挟んだ。
「優成さんは大きいから、ベッド使って下さい。私だったらソファでも十分だし」
 矢田さんが座っていたソファは、ふかふかで大きいのだけど、兄弟の中でも一番がっしりした体型の優成さんには少し狭そうなのだ。しかし、すぐに矢田さんに反対された。
「女の子がソファで寝るなんて駄目だよ、風邪引いちゃうよ。それなら僕のベッドを優成と、半分こするから」
「それは俺が遠慮したい」
「あはは」
 優成さんの肩に腕を回して言う矢田さんの身体を引き離しながら、優成さんが嫌そうに言った。矢田さんはそんな彼を見て笑っている。
「じゃぁ、二人でベッドをシェアしたら」
「馬鹿。それこそ、駄目だろう」
「いいじゃないか。ねぇ萌ちゃん?」
 矢田さんの言葉に私が頷いて優成さんを見ると、優成さんはふと黙り込んだ。
「別に変なことするわけじゃないだろう」
「……する、しない、の問題じゃないと思うんだが」
「いいじゃないか。一緒に寝てあげれば、怖い夢見ても、すぐに優成を起こせばいいんだから。なんなら別に僕が添い寝してあげても良いんだよ」
 矢田さんのその言葉に、優成さんは渋々承諾した。
 
 疲れたので翌朝にシャワーを浴びると言う優成さんは、歯だけ磨いてベッドに入った。
「嫌だったら言うんだぞ。すぐにソファに移るから」
「大丈夫ですから寝て下さい。優成さんも明日大学でしょう?」
「俺はないぞ。明日は土曜日だろ、忘れたのか?」
 そういえば明日は週末だった。風邪を引いていて、今週数日学校を休んでいたせいか、曜日の感覚が狂ってしまっているようだ。
「あ、でも、土曜日は剣道の日じゃ」
「稽古は夕方からだから気にするな」
「はい…

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