Monday, April 27, 2009

愛とはかくも難しきことかな33

 どちらの決心も付かないまま、あからさまなネオンのついた道へ入ろうとしたとき。
「おい!」
 後ろからぐいっと上腕を掴まれて、肩を組んで萌を引きずるように歩いていた男から引き離された。
「な、なんだ、おまえ」
「補導だ。あんたこの子に何しようとしてたんだ、おっさん」
 補導の言葉を聞いたとたん、男はすごい速さでその場から逃げていった。なんて速い逃げ足なんだと呆れていると、頭の上からもため息が降りてきた。
「お前、何してるんだ」
「え、宮内!」
 てっきり警官かと思っていたのに、聞き覚えのある声だと振り向けば見知った顔があった。
「先生をつけろと何回言えば分かるんだ、お前は」
 髪の毛の後ろをがりがり掻きながら、彼はまた大きくため息をついた後、雰囲気をかえてじろりと睨みつけてきた。あまり見たことのない迫力にうっと一歩後ずさると、彼は逃がさないぞとばかりに距離をつめてくる。
「こんな怪しい場所でこんな遅い時間にあんな変な男と、なーにーをーしてたんだ」
「み、宮内には関係ないじゃない」
「先生だっつーの!じゃなくてだな、お前な、俺が本当に補導警官だったらどうするんだ。お前面倒みてもらってる身で保護者呼べんのか」
「いいの!関係ないの!あの人達とはもう関係ないの!」
 そう怒鳴って、近くに寄ってきていた宮内を力任せにどんっと押した。
 宮内は保険教諭のくせに体育教師のような体格をしている。だからそんなにダメージは受けず、バランスを崩し二三歩後ろに下がっただけだった。
「お前、どうしたよ。その格好もおかしいし、家でなんかあったのか?」
「…」
 宮内を信用しても良いのだろうか。
 適当に言い含めて電車賃だけ貰えたりしないだろうか。いや、でも携帯電話で家に連絡されたら厄介だ。どうしよう。
 爪をガリ、と噛みながら考えていると、宮内はもう何度目にかになるため息をついた。
「とりあえず、どっか入るか。こんなところで二人突っ立っていても目を引くしな」
 そう言われてから、自分たちがホテル街の入り口あたりにいることに気がついた。
 喧嘩中のカップルだとでも思われたのか、一組のカップルがくすくすと笑って通り過ぎていく。
 昼から何も食べていないことに気がついて、唐突にお腹がなった。
 宮内にも聞こえたらしく、苦笑いをしながら付いて来いと言った。

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