Saturday, May 30, 2009

愛とはかくも難しきことかな36

 とりあえず連絡だけは腹を括ってすることにした。
 少し冷めた頭で考えてみればお金も全部払ってもらっていたんだし、いくら酷い人達でも悪戯に逃げ出すだけではただ混乱させるだけだ。祖母の形見とかも御堂家にあるし、いつかは向き合わなければいけない日もくるかはしれないし。
 でも話して分かり合える相手なのかな。
 御堂の兄弟は皆どこか違う国の住人なのかと思えるくらい理解できないけど、御堂の父もそうなのかな。初めて会ったときはそうもおかしいと思えなかったけど、能あるタカは爪を隠すみたいな。ちょっと違うか。
 
 なんてつらつらと考えて現実逃避を試みたけど、宮内の無言のプレッシャーに逃避はできなかった。
 仕方なく、よしっ、と気合いを入れて番号をダイアルする。
 どきどきしながらコール音を待っていると、1、2回鳴ったくらいですぐに相手が出た。
『もしもし?御堂でございます』
「………っ」
 予想していなかったトメさんの声に、電話口で咄嗟に声を潜めてしまった。
 大体夜の8時過ぎには家に帰ってしまうのに。
 どうしよう。何て言おう。御堂の父に代わって下さい?あぁ、でも掛けてしまうとやっぱりいざとなったら何を言えば良いのか分からない。
『もしもし?……』
 沈黙していると訝しげなトメさんの声の後、突然電話の向こうでゴソゴソと動く音が聞こえ、誰か違う人が電話口に出た。
『萌?』
 優成さんの声がした。
『萌だろう?今何処に居るんだ?』
「優成さん……」
『良かった、無事だったんだな』
 御堂の父でも克巳さんでも双子でもなかったから、言葉がするりと出た。
「わたし、もう御堂の家には帰りません」
『萌、ちょっと待て。出ていった方が良いって言ったのはお前のためを思ってだったけど、こんな風に』
「違うんです。優成さんのせいじゃないんです。私、もう無理です。御堂みたいな家でやってくのは」
『萌、とりあえず一旦こっちに帰ってきて話そう。もう遅いし、みんな心配してるし。迎えをやるから、な?』
「嫌です。帰りたくないです。嫌です……」
『萌…あ、兄さんっ』
 嫌だ嫌だと繰り返し言っていると、優成さんの慌てるような声と電話口の人の気配が入れ替わる。
『萌ちゃん?』
 克巳さんの声にびくりと身体が震えた。
『どこに居るの?』
 彼の声は怒っていた。双子を殴った時のように、声は荒くないのに含まれた怒りに萎縮してしまうような、そんな声だった。彼が自分に向かって怒っているのは初めてだった。
『言えないのなら、捜索願を出すよ。うちの家が本気になったら、人一人探し当てるのはそんなに難しくないんだよ。大事になる前に帰ってきた方が良いよ』
 ——兄さん、そんな言い方は……、と克巳さんの後ろで優成さんの嗜める声がする。
『未成年がこんな時間に外に居るのが駄目なことは萌ちゃんも知ってるよね。危ない事件に巻き込まれる前に一度戻っておいで』
「だって、戻ったら、克巳さんたち、また虐める」
『僕が君を虐めたことがある?』
「いつも意地悪く笑っていたじゃない、嘘つき!」
『萌ちゃん…』
「私、御堂の家の道具になんてなりませんから!婚約なんて絶対しませんから!」
『婚約?もしかして、あの話聞いてた……』
「御堂の家なんて大嫌い!克巳さんの馬鹿!ふぇ、うぁああん!」
 途中泣き出してしまった自分の手元から宮内が携帯電話を取り上げ、彼の耳にあてた。
「すみません、洀英学院で養護教諭をしている宮内と申しますけど……」
 泣き顔のまま宮内を見ると、大丈夫だとでも言うように彼は笑って電話口の向こうと話しだした。
「えぇ、今晩はうちの実家に泊めさせますから。…はい、えぇ…はい」
 テーブルに置いあったナプキンで目元と鼻を拭っていると、宮内は大体話しがついたようで、電話番号を交換して電話を切った。
「よし、とりあえず今晩はこれでお前も落ち着いて寝れるな」
「び、びやうぢ〜〜」
 せっかく奇麗にした顔はまた号泣したせいですぐにぐちゃぐちゃに戻ってしまった。

Thursday, May 28, 2009

しのやみ よわのつき06

 マナは基本的に7時半過ぎに仕事場を出て8時前に家につく。外資系証券銀行のアナリストは朝が早く帰宅も遅いが、給料は文句なく良いし福利厚生などの手当も良い。
 レイと過ごす時間は多少減るけれど、週末の残業は少ないので休日しっかり時間を取れる分普通の仕事よりも良いかとも思ったりしている。

「ただいまー」
 都心にほど近いデザイナーズマンションの一室にある我が家に辿り着くと、すぐにレイが玄関に顔を出した。
「おかえり、ご飯できてるよ」
「ありがとー。いつもゴメンね」
「好きでやってるんだから気にしないで」
 ちゅ、とマナの頭に唇を寄せると、マナはぼっと顔を赤くさせた。
「もうっレイちゃん、ここは日本なんだからそういうスキンシップは」
「はいはい、分かってますよ〜。それよりご飯にする?それともお風呂?」
 いつも通りレイを諌めようとするマナを軽く流して、冗談めかしてそう言う。可愛らしく見えるように上目遣いもつけて彼女を見つめると、マナは額を押さえてはぁーと大きくため息をついた。
「レイちゃんの将来が心配だわ。すっごいタラシになりそう」
「はははっ、俺は一途だから好きな子だけにしかこういうことはしないよ」
「本当かしら」
 踵の低いパンプスを脱ぎながらマナは玄関から上がる。
 美味しそうな晩ご飯の香りにお腹の虫を鳴らしながらリビングに入って、通勤鞄をソファに置いた。それから手を洗うために洗面所に行く。
 レイはその間にダイニングで晩ご飯の用意をする。
「マナ、今週末の予定は?」
 ついでにコンタクトも外したのか、メガネ姿になって戻ってきたマナにレイは訪ねた。
「ん、いつも通り家の片付けかしら。あぁ、そうそう」
 思い出したようにソファの上の通勤鞄に手を入れる。
 中から出てきたのは青いよく見かけるレンタルビデオ屋の袋だった。
 ダイニングのセットをし終えたレイは興味を引かれたようでソファまでDVDを見にやってきた。
「何?映画のDVD?」
「ううん、ドラマなの。久しぶりにどうかと思って」
「ふーん、数年前の?名前は聞いたことあるけど」
 何年か前に大ヒットしたそれは何回か再放送されていて、レイも名前だけは聞いたことがあった。ただテレビの放送時間が合わなくて、わざわざDVDを借りてまで見ようとは思わなかったので今まで見たことはなかった。
「ご飯の後で良かったら一緒に見よう」
「うん。あーお腹空いたよぅ。きゃーハンバーグだぁー美味しそう」
 レイが用意する食事の大半に大げさに美味しそうと騒ぎ立てるマナだったが、レイもまんざらではなくゆるみそうになる顔を誤摩化しながら席についた。

 食後にマナは紅茶を入れ、リビングのソファにレイと並んで座ってDVDを観た。内容は恋愛物で、一途に男のことを想う高校生の純愛を描いている物だった。
「うわ、この俳優、あの吉嶺聡?若いなー」
「あたしと同い年だからね、この頃18歳だったかしら?」
「このドラマで人気出たんだろ」
「そうね、一躍時の人になったわ」
 そう言ってマナは懐かしそうに画面を眺める。
 ドラマのストーリーの内容よりも、ドラマその物を懐かしがっている感じだ。それにレイは違和感を抱いてふと尋ねる。
「マナはこの頃日本に居たの?」
「いいえ、でもたびたび帰ってきていたから」
「ふぅん?」

Tuesday, May 19, 2009

しのやみ よわのつき05

 深夜寝静まった寝室の扉が静かに開いた。
「マナ…、起きてる?」
 密やかな声がかかるが、それに返事はなかった。
 レイにとってはその方が都合が良い。音を立てないように忍び足で寝室に忍び込むと、ベッドの傍まで寄る。
「マナ……」

 朝も昼も好きなだけ触れられるけれど、それは子供のフリをしているからだ。
 自分が大人になっていくのを自覚するのと共に、彼女の瞳に小さな脅えが見えるようになった。

「マナ……」
 軽く唇に触れる。

 小さな頃は甘えるレイに軽く愛情のキスを落としてくれたのに、最近はもうそれもない。確かに海外で過ごした幼少時代に比べて、レイも大きくなったし日本でそんなことをする家族はいないけれど。
 しかし理由は文化の違いとかそんな単純なものではなくて、マナがそれをすることに罪悪感を感じるようになったからだ。
 それまで時々一緒に入っていた風呂をレイが嫌がるようになったのは、裸のマナを前に平常を保てないことに気づいたからだった。   じゃぁマナがレイに愛情を示すキスをしなくなったのは何故だろう。

 彼女の頬を軽く撫でていると彼女の瞼が小さく震えた。
「……ん」
 唇から小さな声が漏れる。
 起きるのかと身構えた彼の予想に反して、マナは起きなかった。
 しかし目を閉じたまま魘されるかのように軽く眉間に皺を寄せて、苦しそうな表情になった。
「……い……」
 何かを呟く様子にレイが耳を寄せると、「ごめんなさい」という言葉が何度も何度も繰り返される。
「ごめ……、許して……」
「大丈夫だよ、マナ。俺がいるから」
「レイ、ちゃ」
「そうだよ、俺だよ」
 悪夢に魘されているらしいマナをあやすように手を握ると彼女が目を薄らと開いた。寝ぼけているようだが、レイの存在を認めて懺悔するようにぎゅっと彼の手を握りしめて泣き出した。
「あ、ごめ……ごめ、ん。あたしの、せい。許して、おねが……あたしが……」
「許すよ、大丈夫。マナ、愛してるよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「大丈夫。目を閉じて、眠って」
 彼女をあやしながら寝かしつけると、数分もせずに彼女はまた眠りに落ちた。元々寝ぼけていただけらしい。
 
 こんな風にマナが謝罪を繰り返して魘されることはよくある。
 彼女が自分に対して感じる罪悪感が、時たまこうして悪夢になって彼女を苦しめるらしい。 
 大事に思うのと同じだけ、こうして魘される彼女に満足している自分がいる。
 こうやって罪悪感にがんじがらめにされればされるだけ、彼女が自分の方を向いてくれる。
 マナが罪悪感を抱える過去のことなどレイにとってはどうでも良かった。マナが自分と居てくれる理由。それだけが必要なのだから。

 形の良い額に軽く口づけを落とすと、レイは立ち上がって音を立てずに部屋を出て自室に戻った。

Saturday, May 16, 2009

しのやみ よわのつき04

 ホテルを出たところでタクシーを拾い、急いで帰ってきたマナはリビングのソファで寝転がっているレイを見つけてほっと息をついた。
「おかえり」
「大丈夫?気分は?」
 心配は杞憂だったのかレイは平然としておやつに置いておいたプリンを食べている。額を合わせても特に熱もなさそうだ。
「ごめんね。テレビ見てたら直っちゃったよ」
 ソファの横に座り込んだマナの髪は急いでいたせいかぼさぼさになっており、レイは申し訳なさそうにそれを指で梳いて直してやった。
「ううん、いいの。ビックリしたけど、レイちゃんが元気なら」
「仕事は良かったの?」
「うん、もう終わってたから」
 さらさらの髪の毛を触りながら聞くレイに、マナはさらりと嘘をついた。
 その時レイはふと髪の毛を鼻先に寄せた。
「煙草の匂いがする」
「え」
 くんくん、と彼女の首筋に顔を寄せ、匂いを嗅ぐとすぐに身体を押しやられた。
「し、仕事の後に、同僚とちょっと休憩してたから、その時についたのかも」
「ふぅん。その人、男?」
「え、あ、女、の人、よ。ど、どうして?」
 今まで残業のことについて聞かれることは無かったのに、突然追求されてどぎまぎと答えに詰まっていると、レイは胡乱げな目をした。
「ふうん?」
「あ、ほら、レイちゃんドラマ見ていたんでしょう?」
 まずい、と咄嗟にマナはテレビを指差した。
 今話題のドラマでレイも好きなのか、マナが火曜の10時過ぎに帰ってくると大抵それを見ていた。だから彼も注意がそれると思ったのだけど。
「…まぁ、いいけど」
「あ、あのどんなドラマなのかしら、これ」
 仕方ないから誤摩化されてやる、とでも言いたげなレイにマナは必死に場を繕おうとドラマの話題をふった。
「中学時代に女の子に惚れていた男が、大きくなって再会して、また恋に落ちる話。だけど、どっちかっていうと男が執念深く女の子の方を追いかけてる話」
「一途ってことね。素敵じゃない」
「主演が吉嶺聡だから許せるだけで、ブサイクがやったらストーカーだよ」
 解釈の仕方は人それぞれだけどね、とレイがマナを呆れた顔で見ると、彼女はテレビに映る主人公の男と女のやり取りをぼんやりと見つめていた。

Monday, May 11, 2009

しのやみ よわのつき03

 10時過ぎ。
 けだるげな空気の中、マナは身体を起こして、地面に散乱した自分の荷物の中から携帯を拾い上げた。最中に携帯の着信音を聞いたような、そんな気がしたのを思い出したのだ。
『頭痛い。風邪ひいたみたい。早く帰ってきて。マナがいないと寂しい』
 15分ほど前に届いたメッセージ。
 送信者は勿論この世で一番大切なあの子。
 それを読んで顔色を変えた彼女はすぐさま機敏に服を身につけだした。
「どこ行くんだ」
 ヘッドボードに身体を持たせながら煙草を吸っていた男が、マナの慌ただしい着替えを眺めながら尋ねる。
「帰る。レイちゃんが頭痛いって……っ!ちょっと」
 脇目を振らず、部屋を出ていこうとする彼女の腕を、掴んで引き寄せた。
 文句を言おうとする彼女の唇に口づけて黙らせる。
 最初は抵抗していた彼女も諦めたのかしばらくすると大人しく彼に凭れながらその時間が過ぎるのを待った。
 愛しい人に触れるように彼の大きな手がマナの頭の後ろを撫でる。
 それに心地よさを感じたとき、突然その手がマナの長い髪をつかんだ。
「いっ」
 突然のことにちいさく悲鳴をあげた彼女は、至近距離に迫った相手の男を睨みつけた。しかし相手の男は口に小さい笑みを浮かべるだけ。
 マナだって理解はしている。二人の間の上下関係を。
「忘れてないだろうな?」
「忘れてなんか、ないわ。私はもう誰も好きにならないし、レイちゃんをちゃんとした大人に育てあげることだけが、目標なの」
 いつも通りの答えを言うと、男は満足したのかふっと煙草の煙をマナに吹きかけると興味を無くしたように、ベッドヘッドに身体を預けてくつろぎだした。
 まともに煙草の煙を吸い込んだマナは咳き込みながらも、立ち上がる。恨めしそうに睨みつけても相手はどこ吹く風だ。
「煙草、身体によくないわよ」
「ふん」
 彼女が出ていって、扉が静かに閉まったところで、男は突然乱暴に傍に転がっていた枕を拳で叩いた。
「くそっ」
 男の端正な顔がゆがんで悔しそうな表情に変わる。
「何年たっても邪魔しやがって…」
 さきほどまでの余裕はもうなかった。
 苛々と吸っていた煙草を灰皿で消すとシャワーを浴びるためにベッドから降りる。
 彼女が居ないのならばこんなところでゆっくりする理由がなかった。

Sunday, May 10, 2009

しのやみ よわのつき02

 朝の6時。
 隣の部屋から聞こえてくる目覚まし時計の音で目を覚ます。

 しばらく微睡んでいると、腹の虫をうるさくさせる香ばしい朝食の香りが漂ってくる。
 頃合いを見計らって起き上がり、洗面所で顔を洗う。
 さりげなく寝癖だけを確認したあと、わざと寝起きのように怠そうに足音を立て、ダイニングに顔を出した。

 見慣れた背中。湿ったままの髪が後ろで緩く纏められている。
 その後ろ姿がどれだけ自分を欲情させているか、この人は多分分かっていない。

「おはよう、マナ」

 変声期途中の掠れた声が出る。

「おはよう」

 彼女が振り向く前に後ろから抱きついた。
 首もとに顔を埋めると、石けんの良い香りがする。
 ドクンと高鳴る胸を誤摩化すようにその頬に口づけた。

 俺の大切な人。
 俺の唯一の家族で、母親。

 でも、母と呼んだことはない。
 呼ぶ必要もないし。
 この人と俺を結ぶ絆は愛情だけだ。

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「珍しいな、お前が家に帰らないなんて」
 最近流行の若者向けの安いイタリアンのチェーン店で前に座った悪友が口を開く。
 時間は8時を回ったばかり。先ほどまで二人で繁華街をブラブラうろついていた。
「今日はマナが遅いから」
「あぁ、なるほど」
 複雑な家庭事情をおおまかに知っている友は納得した風に頷いた。
「何か大事な用事なのか?マナさん」
「いや。この日は大体毎週残業してる」
「えー、でもお前いつもは家帰ってるじゃん」
「なんか今日は夕方遅くなるって連絡入ってたから」
「ふーん?」
 首を傾げる相手を横目に口を潤すためにドリンクバー用のジュースが入ったグラスを持ち上げる。
「もしかして男だったりして」
「やっぱり、毎週残業ってそういうことなのかな」
 レイが下を向いてため息をついた。
 悪友は「マザコン」と言ってけらけら笑う。
 でもレイにとっては笑い事ではない。
 もしもマナが本当に男と会っているのなら、阻止しなければ。
 きっとレイが強く言えば、彼女はもう残業しなくなる。
 ただ生活を支えているのはマナだから彼女の仕事を煩わせない程度に、賢く動かなければ。
「おい、お前、変なこと考えてないだろうな」
「え?なにが?」
「いや………レイのことだから、普通にマナさんの邪魔しそうだなって」
「あはは、まさか。いくら俺でもマナの邪魔なんかしないよ」
 邪魔。
 邪魔なのは俺とマナの間に割り込んでくる奴だ。
 誰であろうと許さない。この日常を壊そうとする人間は。

Saturday, May 9, 2009

しのやみ よわのつき01

 女の人生の中で一番大切な物ってなんだろう。

 恋すること?美しくなること?幸せな結婚をすること?
 それとも最近の女性なら仕事で成功することと答えるだろうか?


 私には自分だけの確固たる信念に基づいた幸せの概念がある。
 そして、それは他人と似通っているようで相容れない、道徳に外れたどこか間違ったものであるのも理解している。

 それでも私はその"幸せ"を手に入れた。
 努力と歳月をかけてやっと叶えた。


 だけど、最近、分からなくなることがたまにある。
 自分がしているのは、一体何なんだろうか、と。
 最初に信念だと思っていたものが、今になって、自分のしていることへの言い訳にしか聞こえない。


 一体、どこで間違ってしまったのだろうか。
 あの頃の、焦がれるような情熱は、どこへ消えてしまったのだろう。
 いや情熱はある。
 今も変わらず。

 でも、苦しい。

 罪の重さに、私はいつか負けてしまうだろうか。

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 朝6時。アラームの音で目を覚まし、シャワーを浴び、キッチンに立つ。
 昨晩セットしておいた炊飯器から炊きたての白米を弁当箱につめる。その後仕込んでおいたおかずを調理していき出来上がった順番にまた弁当箱のスペースを埋めて行く。
 最後にソーセージと卵を焼き、簡単に作ったサラダをそえた皿に移し、同じタイミングで出来上がったトーストにバターを塗り一緒に乗せた。

 廊下からスリッパを引きずる足音が聞こえた頃、ダイニングのセットも完了していた。

「おはよう、マナ」

 声変わりを向かえたばかりの掠れた声が、背中に響く。
 変わらない、幸せの風景。

「おはよう」

 振り向く前に、腰あたりにまだ細く成長途中の腕がまわされた。
 いつのまにか追いつかれた身長。目線の高さはほとんど一緒。
 頬に落とされる口づけも、もう背伸びを必要としないだろう。

 いつまで続いてくれるのだろうか。
 この偽りの時間。


 私には一人息子がいる。
 今年中学1年になった彼はレイという。27の自分の息子というにはムリがあるので世間体では弟扱いになっている。
 しかし戸籍にはきちんと自分の子として登録してある。
 成人してすぐに養子にしたのだ。

「マナ、今日は遅い?」

「あー…、うん、多分」
 ちらりと仰ぎ見たデジタル時計は、日付のとなりにTueと曜日を映し出している。
 火曜は、毎週マナがいつもより遅く残業して帰る日だ。
「そっか。俺今日は部活がないから早く帰るんだけどな」
 残念そうに言うレイにマナは申し訳無さそうな表情を浮かべるのを見て、彼は慌てて笑みを作る。
「いいんだ、別に、夕飯なら友達と食べに行くから気にしないで」
「そう…ごめんね、なるべく早く帰るようにするから」
「本当に気にしなくていいから。養ってもらってる身で我が侭なんか言えないよ」
 首をすくめながら冗談めかしたレイに、マナはぱっと表情を強張らせた。
「養ってるとか、そういう負い目は—」
「うん、分かってる」
 硬い声で口を開く彼女の手をぎゅっと握ってレイは言った。
「分かってるから。ね、マナ」
 優しい声で、彼女を諭すように語りかける。
「俺はあなたの息子だから」
 愛しさを込めた眼差しでマナの視線を受け止める。
「だからマナが俺の面倒見てくれるのは当たり前のことなんでしょ」
「うん」
「俺はね、マナがこれからもずっと一緒に居てくれるのなら、1日くらい離ればなれになるのは構わないんだからね」
「うん」
「だから、一生俺を捨てないでね」
「うん」
「ずっと二人で居ようね」
「うん」
 いつのまにかマナの手よりも大きくなったレイの掌が頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「俺はマナが大好きだよ」
「うん、私も大好き。レイちゃんが一番大切。レイちゃんをこの世界で一番愛してる」
「俺もだよ。マナだけいればいい」
 ずっと昔から変わらないやり取り。
 毎日続く、まるで呪詛のような言葉の羅列。

—レイちゃん、愛してる。

—マナだけがいればいい。

 まるで催眠術にかかるように、頭の中がそれだけで埋め尽くされる。

 そう。レイちゃんの居るこの世界に意味がある。

 そのことを確認しながら、マナはほっと息を吐いた。

愛とはかくも難しきことかな 閑話5

 渡辺明代が信じた男は、御堂ほどではないがそれなりの家柄で、御堂の家で育ったせいかあか抜けていた明代に目をつけた。しかし結婚する気などは元からなかった。
 明代がその事に気がついた頃には腹に子供を授かっており、相手はすでに誰か他の女性と結婚をしていた。彼女は本当のことは言えず、結婚後も愛人関係を続けたいと言う彼の前から姿を消すことを決心した。同じ頃に母の珠子も亡くし、傷心のまま子を産んだ明代は、産後に体力が回復するとそのまま全てを忘れられるように遠くに引っ越した。
「父さんは今までずっと萌ちゃんの祖母にあたる明代さんと交流が続いていたんですか?」
「いや、明代さん達はこの街を去ってしまったし、疎遠にはなっていたんだけどね。数年前に、明代さんから何十年かぶりに祖父に連絡が入ったんだよ。自分に何かあったら孫を頼む、と」
「どうして萌ちゃんの父方に頼まなかったんだろう?」
「当時の詳しいことはよく分からないけれど、頼めそうな人はいなかったんだと思う。実際明代さんが死んだ時に弁護士から聞いた話では、萌ちゃんの父方の親族で連絡の着く人はいなかったらしいし。それに、僕のところなら金銭面で負担になることはないだろうから彼女の将来の心配もなかったんだと思う」
「なるほどね」
 確かに御堂の家なら子供を一人引き取ったところで、金銭的枷にはならない。萌ちゃんが気負わなくても十分なほどに面倒を見てあげられるだろう。
「祖父と一緒に会ったとき頭を下げて言われたんだ。家族になってやってくれって。萌は、親の記憶もほとんど無く、兄弟も親戚も居なくて可哀想だと」
——自分には御堂家があったけれど、萌には自分以外誰も居ない。だから、どうか家族になってやってくれないか。
「それは明代さんの娘家族が事故にあったとき、萌ちゃんが両親を亡くしたときのすぐ後だった。僕も祖父も引き取ることに関しては異論なかったから、もしもの時は頼って欲しいと返事した」
 それから十数年。明代さんも早いうちにこの世を去ることになった。まるでその時のことを予測していたかのように、入院する直前に明代さんは御堂を訪ねていた。
 隠居をしてしまった祖父を呼び寄せようかと訪ねると、ちょっと寄っただけだからと朗らかに彼女は笑った。
 ただ十数年前の約束はまだ有効かと。
 勿論だと頷く僕を見て、嬉しそうに手を握ると「お願いだよ」と言って去っていった。その一月後に彼女の訃報が入ったのは。
「僕は明代さんの『家族になってやってほしい』という願いを叶えてあげたかった。僕の父も同じ気持ちだったし、御堂で引き取ることにまったく依存はなかった」
 最初は隠居した祖父が一人だったために萌ちゃんを引き取ると申し出たが、明代さんの望みを叶えてあげるためにも、そして長く続いた渡辺の母子との確執のためにも、萌ちゃんを自分の娘にするのが父は一番だと思った。
 曾祖父と珠子さんが出会いさえしなければ、渡辺に産まれた彼女達ももっと普通に人生を送っていたかもしれなかった。
 一種の呪いのように渡辺家には女児が、御堂には男児が生まれ続いたのも何かの運命かもしれないとさえ思った。萌ちゃんが、御堂の家に入れば、欠けていたピースがはまるような。そんな思いすらした。
「気兼ねさせないように本当の父親のフリをすることにした。彼女は実の両親の記憶はほとんど無いと明代さんから聞いたから、僕を本当の父親だと思ってくれるのが一番御堂の馴染み易いと思ったんだ。でもなぁ…、渡辺の姓で居たいと言われて。DNA鑑定も念のために偽造しておいたのに、御堂の養子になる気はないらしくて…」
 父は悲しそうに肩を降ろした後、ハッと何かに気がついたように顔をあげてこちらを見た。
「克巳、お前なら萌ちゃんを説得できる!」
「はぁ?」
「うんうん、お前が優しいお兄ちゃんになれば、萌ちゃんが本当の家族になりたいとすら思ってくれるかもしれない」
「えぇ、嫌ですよ。面倒くさい」
 日本人形のような顔の萌ちゃんを思い浮かべてみる。清楚な印象が強く、マナーも一通り覚えているし、御堂に入っても見劣りのしなさそうな逸材だ。
 しかしあの冷たそうな顔の子を可愛がる自分を想像できない。
 構うと逆に嫌がられそうな、敢えていえば女版優成のような子じゃないか。
「まぁ、優しいお兄ちゃんは何だが、可哀想な彼女のことも考えて早く家に馴染むように気にかけてやってくれ」
「そうですね。まぁ、同情はしますし、それくらいなら」
 突然我が家に妹が増えた謎も解けたし、まぁ少し話しかけるくらいならしてあげよう。
 ふと脳裏に勘違いをした双子達の顔が浮かぶ。彼らに早いところ真実を教えてやった方が良いかもしれない。
しかし放っておくのも面白いような気もするが。
「父さん、この話は弟達にも教えてやって良いのかな?」
「いや。敵を欺くなら味方からと言うし、優成達には本当の妹だと信じ込ませておこう」
「そうですか」
 明らかに信じていない3人のことは伝えずに、ほくそ笑みながら父の書斎を後にした。これからおもしろいことになりそうだ。

Monday, May 4, 2009

愛とはかくも難しきことかな 閑話4

 時は遡ること3代前の御堂の当主、克巳の曾祖父の時代。
 厳格で知られていた彼にも一つだけ誰にも知られてはいけない秘密があった。
 それは女中の渡辺珠子と関係があったことだ。政略結婚の末に嫁いで来た嫁に文句はなかったが、若々しく純粋だった10歳年下の珠子に彼はどんどん嵌って行った。そして、珠子も皆が敬う当主に愛され愛人として隠れた関係を築いていても幸せだった。
 その末にできた一子。戦乱の最中だったのを良いことに恋人とは生き別れたと誤摩化し、珠子は可愛い女の子を生んだ。
 それが萌の祖母の明代だった。
 戦争で恋人と生き別れたと嘘をついた珠子に周りは同情的だった。珠子は娘を育てながら住み込み女中として働くことを許され、明代も同じように御堂家で母を助けながらすくすくと育った。
 男兄弟にばかり恵まれた御堂家で明代は皆の娘のように妹のように可愛がられた。勿論、御堂の当主にとっては本当の娘だったためにその可愛がりようは群を抜いたのもので、周りがいぶかしがるほどだった。
 明代が14の年に、当主に孫ができた。
 珠子は御堂の家を仕切る女中頭になり、明代はまだまだ若かったが病気がちだった若奥様の手伝いを仰せつかり当主の孫の目付役になった。
 この孫が今の御堂の当主である、御堂秀美である。

「つまり、萌ちゃんは僕たちの親族、大体またいとこ当たりにあたると?」
「うん。そうなんだ。あのDNA鑑定は、実際は僕の祖父と明代さんのものだ」
 父は革張りのオフィスチェアに深く腰掛け、さきほどのフォルダの中から古びた手紙を一枚出した。
「祖父は死ぬときに、父に秘密裏に遺言書を残した。渡辺の母子のために」
「それまで誰も二人の関係に気づかなかったんですか?」
「多分、祖母は気づいていたんだと思う。僕はあまり詳しく覚えていないけれど、祖父が死んですぐに彼女達は御堂の家から解雇されている。父は僕を連れて彼女達の長屋を時々訪ねて様子を見たり金銭面の援助を申し出たりした。特に母子で身よりのいないのは、当時はあまり良い目で見られなかったから」
「父さん達はえらく彼女達に好意的だったんですね」
「うーん。確かに祖父の妾とその娘、というのは御堂の汚点だとは思ったけど、僕の父は元々妹のように明代さんのことを可愛がっていたわけだしね。僕はしがらみを知らなかった頃はただたんに一緒に遊んでくれるお姉さんくらいの印象しかなかったし」
 軽く笑っていう父は本当にそう思っているのか、当時を思い返して懐かしそうな目をした。
「明代さんはしっかりした人でね、祖父を亡くし御堂に居場所を無くして消沈していた珠子さんを支えながら頑張っていたよ。なのに悪い男に引っかかって、珠子さんみたいに片親の母になってしまって…」

Saturday, May 2, 2009

愛とはかくも難しきことかな35

 運ばれてきた料理をもくもくと食べている前で宮内は私が説明した話しを頭の中で整理しているのか顎に手を当てて考え込んでいる。
「えーと…、まず血が繋がっていると説明されて御堂の家に世話になるようになったと。それから妾腹だと兄弟に虐められるようになった。行く宛も特にないから多少は我慢していたけれど、兄弟の一人に真剣に家を出ろと諭された。その後政略結婚のために引き取られたと知って逃げ出して来たんだな」
 こくんと頷くと、宮内はうーんと唸った。
「今どき政略結婚とか…」
「でもこの耳で聞いたもん」
 それがなければ御堂の家から怖くなって逃げ出すこともしなかった。今から考えると優成さんはそういう意味で出ていけと言ってくれたのかな。だったら彼のことを悪く思ってしまって悪かったな。
「しかしなぁ、最初に引き取られたときに養子の話しをして断ったんだろ?」
「確かに養子に入るのは断ったけど、今考えると御堂の父…御堂さんはかなり拘っていた気がする。きっと最初から政略結婚させるつもりで娘にしようとしてたんだよ」
「でも4人も息子がいるんだし、わざわざ他人を引き取らなくても」
「相手先に息子しかいないとか」
 納得できないのか彼は辻褄が合わないといって、うーんと唸ってまた考え込んでしまった。
 辻褄が合おうが合わなかろうがもうどうでも良いのだ。御堂の家なんてもう帰りたくない。
 ハンバーグセットを満喫して、残ったメロンソーダも飲み干した。満腹だ。
 これからどうしよう。
 空いていたお腹もいっぱいになったし、後は今晩の寝床と今後のお金なんだけど。考え込んでいる宮内を横目に、逃げる算段を考える。トイレに行くと言って普通に逃げ出せそうだけど、そうするとすぐに御堂家に連絡が言って、この近隣に人が派遣されてすぐに見つかってしまうかも。
 そんなことを思っていると、宮内がおもむろに携帯電話を取り出した。
 番号をダイヤルしようとしている彼の手元から慌ててそれを奪い取ると、彼を睨んだ。
「誰に連絡しようとしてるの」
「お、おい、誤解するなよ。電話じゃない、メールだ。友達と飲みに行く約束をしてたのがいけなくなったって、言おうと思っただけだ。大体、俺は御堂の家の番号なんか知らない」
 確かに偶然会っただけの保険教諭の携帯に御堂家の番号が登録されていたらおかしいけれど。
「信用できない」
 学校の同僚に番号を聞くことだってできるし、もしかしたら宮内には最初から御堂から連絡が入ってたのかもしれない。
 疑いの目で見つめると、彼は疲れたようにため息をついた。
「お前な、これからどうするつもりなんだ」
「…」
「逃げたって一時のことなんだぞ。さっきみたいな相手に捕まらないと限らないだろ」
「だって、帰りたくないもん。あんなところ一生帰りたくないもん」
 あんなところ、と思い出すとまた涙が目元に溜まる。それを見てがりがりと頭をかいた宮内は、お手上げとでも言いたそうに天井を見上げた。
「…仕方ない、今晩は俺の知り合いのところに泊めてやる」
「ほんとっ?!」
「ただし」
 宿をゲットしたと思ってぱっと顔をあげたところに、ずいっと人差し指が持っていた携帯を指差した。
「家に一報入れて、外泊することを許してもらえ」
「えぇっ、やだよ」
「駄目だ。でなきゃ、泊められん。今すぐお前を無理矢理にでも交番に連れて行って、学校に連絡いれて、家族に迎えに来てもらう」
 いつもは軽口ばかり叩く宮内がいやに真剣にそう脅すものだから、ついこくりと同意した。
 途端によし、と元の雰囲気に戻った彼に、ほっとすると、緊張していたのをほぐすようにこちらの髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱してきた。
「心配すんな。なんとかしてやるから」
「…うん。………でも電話しなきゃ駄目?」
「駄目。絶対。でないと俺が誘拐犯にされる」
 即答で返されてがっくりと肩を落とした。
 御堂の家の人と喋ること自体嫌なのに、どうやってあんなに話しずらい人達を説得しろと。克巳さんなんかが出たら絶対にこっちが言い包められるに決まってる。

Friday, May 1, 2009

愛とはかくも難しきことかな 閑話3

 別に彼女が婚約者候補だとは思わないけれど、ただの一般人を父が引き取るとも思えずに、その夜遅く父の書斎に行った。
 父の部屋と自分の部屋は増築した離れにある。といっても、自分の部屋には最低限の家具しかおいていない。さすがに20代も後半に差し掛かると自分のマンションも持っている。ただ実家にいるとトメさんのご飯が美味しいし、一人で広いマンションに居るよりも楽なのだ。勿論大学時代は一人暮らしを満喫したこともあったが、最近は逆に家の方が居心地が良いのでよく寝泊まりに使っているくらいだ。
「父さん、ちょっと良いですか?」
「ん?どうしたんだ」
 何かの手紙を見つめていた父は、さりげなくそれをこちらの目から隠すように近くのフォルダに閉まった。
「あの子、一体どういうことなのか聞いても?突然引き取ってきた上に、本当の妹扱いしろなんて納得がいかないんですけど」
「まぁ、そうだよな」
 隠された手紙が気になりつつも、とりあえず聞きたかったことを聞いた。
 短期間だったがとりあえず書庫で家系図を調べてみたが、本家筋は勿論のこと遠縁にすら渡辺という名字はなかった。会社の社員名簿で過去から現在のデータを調べてみても、萌ちゃんに関係のありそうなそれらしい人間はいない。
 これで答えてもらえなければ、私立探偵でも雇おうかと思っていたのだが——だって気になるじゃないか——予想に反して父はあっさりと降参した。
「これ、見てくれないか」
「?なんですか」
 さきほど父が何かの手紙を隠したフォルダを手渡され、中を開くと思わぬ書類が収められていた。
「DNA鑑定書?これ、父さんが父親になってますけど」
「うん。偽物なんだ、それ」
「はぁ?!」
 DNA鑑定を偽造するのは犯罪ではないか。一体何を考えているのだ。これが世間にバレたら御堂のネームバリューが一瞬で塵になってしまう。警察沙汰だ。
「父さん、一体何を血迷って」
「うーん、どこから説明したら良いものやら」
「最初から全部説明して下さい。でないと納得できません」
「それがなかなか難しいことなんだが…。仕方ないな、お前は長男だし、知っておく義務はあるかもしれない。…本当は僕の代で忘れ去られる筈の、御堂の過去の汚点なんだが…」